side アニ


窓際の一番後ろの席に座っている俺はHRを受けながら窓の外に視線を向けた。

三年の校舎からはちょうど正門が見えて、今日も紺色のブレザーを着たオトウトの姿が目に写った。

今日も待ってる…。でもアイツ学校の方平気なのか?

HRが終わり俺は校門で待っているオトウトの元へさっさと行くか、と鞄片手に立ち上がった。

しかし、教室を出ようとしたところでクラスメイトに捕まった。

「藤宮〜、なにさっさと帰ろうとしてんだよ」

「まさか、デートか?」

「か〜っ、羨ましいねぇ。俺にも一人ぐらい紹介しろよ」

「馬鹿かお前ら。デートじゃねぇし、俺は疲れたからさっさと帰って寝てぇの」

群がってきた友人達を呆れた顔して追い払い、俺は階段を降りた。

だが、またしても捕まった。

今度は他クラスの友人達に。

靴を履き替え、歩き始めた俺に友人達はついてくる。

「私たちこれから遊びに行くんだけど一緒に行かない?」

「そうそう、たまには俺達に付き合えよ」

勝手に腕を絡めてくる女に同意する友人。

俺は心の中でため息をつくとそっけなく返した。

「悪ぃ、今日もパス。用事があんだよ」

友人達に気付かれないようちらっと校門を見れば、心なしかしょぼんとしたオトウトの後ろ姿が見えた。

「えぇ〜、またぁ。藤宮くんがいないとつまんなぁい」

「そうだよ。俺達より大事な用なのかよ?」

お前らよりって、比べられるもんじゃねぇだろ?

「まぁな」

えぇ〜、だのうるさく騒ぐ友人達と別れて俺は背を向けて立つオトウトの背後に近付いた

「う〜ん」

しかし、オトウトは俺が来たのにも気付かず唸っている。

何やってんだこいつ?

「おい」

「わっ!?せんぱ…じゃなくてオニイチャン」

「帰るぞ」

「え?でも用事があるって…」

俺は他の友人やクラスメイトに捕まる前に学校から離れようと歩き始めた。

俺が何も言わず歩き出すとオトウトは俺の隣に並び、俺を下から見上げて聞いてきた。

「オニイチャン、用事って何?」

ちらりとオトウトに視線を向けるとオトウトは上目使いできょとんとした顔で首を傾げていた。

それ止めろ。お前がやると可愛すぎるんだよ。

俺は口から出そうになった言葉を飲み込み、平静を保って返した。

「用事なんてねぇよ。あれは嘘」

「何で?」

さらに首を傾げ疑問符を飛ばし始めたオトウトに俺は続けて言う。

「あいつらに付き合うと大変なんだ」

地面を見つめて黙り込んでしまったオトウトを見て、俺は苦笑する。

何か余計な事考えてんな。お前がいたから俺が遠慮したんじゃないかとか…。

俺はうつ向くオトウトの頭を撫でるとその考えを否定してやる。

「お前変なこと考えてんなよ?別にお前がいたからってワケじゃねぇし、俺は始めから今日はそのまま帰るつもりだったし」

「…うん」

それでも納得がいかないのかオトウトは小さく頷いて立ち止まってしまう。

まったくこいつは…。

たまに強引なくせにどうしてこう変なとこで気にするかなぁ。

それが俺の事でってのは嬉しいけど、こいつにこんな顔させたいワケでもないし似合わない。

お前は気にせず俺の隣で笑ってればいいんだ。

「何ぼーっとしてんだ、置いてくぞ」

「あっ、待って!!」

再び歩き始めた俺に慌ててついてくるお前。

今はそれでいい。でも、いつかきっと俺と並んで歩く日がくるだろう。

俺はその時を待ってるから早く大人になれよ。






END


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